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第2話
令和の時代が始まって2ヶ月後の7月17日金曜日。
青い空と眩しい太陽の光に照らされて目を覚ました小春は、顔を洗い、髪をとかして三つ編みにして、素早くブレザーに着替えた。親戚で洋食屋の店主の家に住んで半年が経つが、もうこの生活にはすっかり慣れていた。
小春の部屋がある二階から階段で洋食屋になっている一階に降りる。と、既にジョンがキッチンに立っていた。
「おおう、小春。おはよう」
「おはよう、ジョンさん。いつも弁当ありがとう」
ジョンは後ろ手に頭を掻きながら、
「良いってことよ。――ほら、遅刻すんなよー」
「はーい」
小春はカウンターに置かれた弁当を受け取る。
「行ってきます」
更に小春は弁当が置かれていたところのとなりにあったトーストをくわえて店を出る。
「行ってらっしゃい」
時間は登校時刻が迫っていた。
山沿いの道をひたすら走り、林に囲まれた細長い道に出る。走っている間は朝のひんやりした空気が心地良いが、あまり体力がない小春にとっては苦しい道のりだ。
林の中をひた走った先、親友の紗々夏希と会った。
「おはよう、小春!」
「おはよう、夏希」
ふたりはハイタッチすると元気よく一緒に登校した。
昼休み、小春と夏希は屋上で一緒にお弁当を食べる。食べ終えてからは夏希が話しかけてくるまでずっと、未知なる星との交信をしていた。
「今日は何だって?」
「うむ。近所の洋食屋のチーズハンバーグ定食が美味しかったって言ってる」
「宇宙人もジョンさんのお店行ったことあるの?」
「何度か来たことがあったよ。食材にこだわりを感じるって誉めてた。それとね、」
小春は空になった弁当箱を仕舞いながら次の話題に入る。
「私、今日初めて人生相談したんだ」
俯きがちになる小春。
「自分のことが嫌で嫌で仕方ないって言ったら、未知なる星の宇宙人は、自分を愛しなさいって返してきたんだ」
夏希も自分の弁当箱をバックに仕舞ってから、空を見上げる。
空には白い雲がいくらか漂っていた。
「自分を愛するかぁ・・・・・・。なかなか難しいことを言うんだね、未知なる星の宇宙人は」
放課後、小春は途中まで夏希と一緒に帰ったあとも、お風呂に入っても、自分を愛することとはどういうことなのか考え込む。ただ単に自分を甘やかしたり常識外の自由を謳歌してしまうという意味ではないことはわかるのだが、それでも自分を愛することがどういうことなのかについて考えるのはなかなか難しい。
翌朝、登校途中に夏希と合流した小春は、[自分を愛することは、自分を律し、時には甘えさせること]なのではないかという結論に至った。
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