第一章 イギリス紳士とロンドンブルートパーズ

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朱音はこんなお城のような階段を美しい男性にエスコートされていることが既に夢のような気分で、段々と周囲の視線を忘れていた。 二階に上がり右を向けば、靴が沈むようなふかふかの絨毯が敷かれ所々に大きなベージュのソファーが並び、白の壁に歴史を感じさせる飴色の木の壁がクロスするように張り巡らされ、濃紺地に金のフリンジがついたカーテンがたっぷりとしたドレープで天井から床までかけられて、ヨーロッパの古い豪邸か城の中のようだ。 山下公園を眺められる大きな窓の近くでは、結婚式を終えた新婦がシンプルなオフショルダーの真っ白なドレスを着て、ピンクでまとめられたブーケを胸元に持って笑顔で友人達と記念撮影をしている。 朱音は幸せいっぱいの笑顔の新婦をみながら、こんな素晴らしいところで結婚できるなんてどんなに幸せなことなのだろうと見つめてしまう。 父親は未だに納得する男を捜しているなどとメールがくるが、その度に朱音は自分に残された時間が減っていくようで、きっと自分には幸せな結婚など無いと思うと自分だけこの幸せな空間から弾かれたような気持ちになった。
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