第一章 イギリス紳士とロンドンブルートパーズ

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ロビーを抜けると急に天井が低くなり、周囲の壁がクラシカルな印象のものになった。 「こちらが後で行くラウンジで、ここはタワー館ではなく本館で昭和初期に建てられた建物です。 せっかくなので本館の正面に行きましょう」 外人の客も多く、狭い通路を進めばそこかしこにドレスやスーツ姿で大きな紙袋を持っている人々がいる。 その通路を抜ければ一気にとても高い天井のホールに出た。周囲の白い柱には彫刻が施され、正面に回れば広く大きな階段が現れて、朱音はその素晴らしさに思わず小さく声を上げた。 まるで海外の城にありそうな大きな石造りの階段が二階まで伸びて、ラピスラズリのような濃紺のカーペットが階段に敷かれ、階段を上がったその正面には半円形のアーチのようなデザインのエレベーターホールになっていて、その上に丸いクラシカルなアナログ時計が埋め込まれている。 「二階に上がりましょうか」 朱音は冬真の誘いに目を輝かせながらうなずき、冬真は目を細めて腕を組みながら階段を一段一段ゆっくりとあがる姿を、二階から結婚式に参加した人々が驚いたように見ている。
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