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「朱音さん」
冬真の呼びかけに朱音は見上げると、
「このエスコートのスタイルは近代の方式なんです。せっかくです、クラシカルなスタイルも体験してみませんか?」
こんなまるで違う世界にいるような場所で冬真という存在はこの場所に何一つ引けを取られない、むしろこの建物が引き立てているようで朱音はそんな冬真をぼんやり見つめていたのだがその誘いに慌てて頷く。
冬真は腕を外すと、左腕を少し肘を曲げて前に手のひらを下にしてまっすぐに伸ばす。
「この僕の手の甲に同じように重ねて下さい」
朱音はおずおずと右手を出して冬真の手の甲に自分の手のひらを置けば、肘までが冬真と重なる。
朱音の手よりも遙かに冬真の手が大きく、その長い指に朱音は指も綺麗だなぁと感心していまう。
冬真は朱音が苦しくないように肘を下ろして重なりやすくしているが、朱音としてみればこれはこれで異様に密着している気がする。
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