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「朱音が目を覚ましたのか?!」
リビングに冬真が入ってくると、タブレットを使い仕事をしていた健人が思わずいつものソファーから立ち上がる。
「えぇ、少しだけ。また眠ってしまいました」
「そうか」
アレクはちらりとリビングを覗きキッチンに戻る。
そこにはいつ朱音に飲ませても良いように、術を和らげるハーブティーとあかねの好きなアールグレイの茶葉の入った缶があり、アレクはそれに視線を向けると、冬真のための紅茶を準備し始めた。
スミスが掴まった日、アレクがこの洋館に朱音を連れ帰り、事情を知らされ待機していた健人はあらかじめ冬真により用意されていた解毒剤を飲ませるなどしていたが、思ったよりも朱音の眠りは深く、既に二日目の夜だった。
「一旦目が覚めたなら、そろそろ大丈夫だよな?」
さすがの健人も弱気になりそうで冬真に問えば、冬真は軽く笑みを浮かべる。
「大丈夫です。先ほど声も少しだけ出ましたし、数時間寝ればもっと意識は回復すると思います」
「ずっと何も飲み食いしてねぇし、大丈夫なのか?」
「最低限ですが点滴も日中しましたし、全身チェックを兼ねていつのも病院に連れて行こうと思います」
「そうだな、それが良い。
でもお前も飲み物くらいで何も食ってないだろ?ずっと朱音に付き添ってて寝てもいないんじゃ無いか?」
「水分は取っていましたし、健人やアレクと交代で見守ったんです。寝不足はお互い様でしょう?」
「お前は交代の時も寝てないようだったがな」
呆れ気味に健人が言えば、冬真は苦笑いを浮かべた。
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