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冬真の前に、薄い黄色の紅茶が置かれる。アレクはカモミールをブレンドした紅茶を用意し、冬真はアレクにもねぎらいの言葉をかけると、アレクは会釈してリビングを出て行った。
カモミールのハーブティーを一口飲めば、今までより遙かに胸の底まで液体が流れた気がして、冬真の肩が無意識に下がった。
いつも通りに振る舞っていたようで自分の身体がどれだけ緊張していたのかを自分自身で気づかされ、思わず苦笑いが浮かぶ。
「今回も色々とすみませんでした」
冬真が頭を下げると、健人が手を軽く振る。
「今回も俺は何もしてねぇよ。
それこそ今回はお前が一人で終わらせただろ?
正直お前が何をするのか俺は心配だったんだよ。
だけどお前は戻ってきたとき俺の目をしっかりと見た。
安心した、きっとこいつは真っ当な決着をつけてきたんだろうと」
相変わらずの健人の観察眼に、冬真は困ったような顔をした。
「朱音さんに約束させられたんです」
健人はアレクから渡されたロックのウィスキーを飲みながら話しを聞いている。
「帰ってきたら、ぎゅってして欲しい、と」
苦笑いで言った冬真に、健人は目を丸くすると豪快に吹き出した。
「あいつ、眠らされていたんだろ?それなのに言ったのか?」
「えぇ。かなり強力に眠らされていたのにです。
そんなことを言われたら、早く朱音さんの元に帰らなくてはと思いまして」
「やっぱすげぇな、あいつは」
「えぇ」
穏やかに目を細めた冬真を見て、健人もホッとする。
朱音が巻き込まれたことで、冬真が暴走するのではと心配になっていた。
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