第五章 愛しい人へのアメシスト

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以前から『彼女』のことで何かしかねないと危惧していたのが、この洋館に戻ってきた冬真は変わっていなかった。 朱音を心配する、ただの男として帰ってきたことに、健人は朱音の存在が冬真にとって大切な部分を埋める以上に必要な存在なのだと感じ安堵した。 「『彼女』はどうするんだ?」 冬真からはここにイジーがいるんです、と何か包んでいるハンカチを見せられ教えられたが、冬真が朱音を心配し側から離れないことでやっと話しが聞けている状態だった。 「イジーは僕の持つエメラルドに魂が移りましたが、反応することはもう無いでしょう。 ですが約束したのです、お祭りに連れて行き、花火を見せてあげる、と」 「ずっとお前が側に置くのか?」 冬真はいいえ、と答え、 「約束を果たしたらトミーの元に帰します」 「そうだな、それが良い」 彼女の思いを考えればずっと冬真の側にいたいのだろう。 だが冬真には既に朱音という存在がいて、むしろそんな二人の姿を見せるよりも、父親の元に戻ればあの父親も生きる気力を今よりも持てるかもしれないと健人は思った。
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