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冬真はベッドの掛け布団の上に乗っている朱音の右手に手を伸ばし、アメシストの指輪を触る。
朱音が顔を上げるとすぐ側には冬真の顔。
「僕はこのアメシストの指輪を恋人としての証という意味の他に、朱音さんが気づいていたようにジェムとして、あなたを守るために渡した物でした。
ですが違ったんです」
朱音は不思議そうな顔をして、冬真は優しく微笑む。
「朱音さんから、ぎゅっとして欲しいなんて言われて、僕はイエスと言ってもいないのに、気が付けば朱音さんの元に戻って早く約束を果たさなくてはと思っていたんです。
そして何か聞かれたときに嘘をつかなくて済む、そんな終わり方をしなくてはと。
水晶はアメシストになりましたが、その原因を作ったバッカスの心を入れ替えさせた。
朱音さんを守る為に渡したアメシストは、朱音さんが持つことで結局は僕を守ってくれたのかも知れません」
愛おしそうにアメシストをなぞる冬真に、朱音の胸の中が熱い物で一杯になり言葉が出せない。
「他にもあります。朱音さんが幸せを運ぶクローバーにしたあのエメラルドのおかげで、『彼女』を最悪の事態から救えたんです。
そのきっかけを作ってくれたのは、朱音さんがあのエメラルドに幸運という意味を持たせたからでもあるのですよ」
冬真の言葉に朱音は驚いたが、すぐに表情を引き締め話しを聞かせて下さい、と躊躇せずに言えば、冬真はあの講堂でイジーとどういう会話をし、最後に交わした約束も、その後父親であるトミーの元に渡すことも話した。
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