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「僕は魔術師として理想的なのだろう思って来ました。
宝石魔術という道を探求し、書物だけでは無く実験や実践が伴う必要性も理解していましたし、よくわからない事象は試してみたくなるし興味が湧く。
アレクがいなければ寝食を忘れ魔術の研究に没頭したでしょうし、健人がお前はおかしいといつも真っ直ぐに指摘してくれなければ、自分のおかしいところなど気づきもせず、そもそもどうでも良いと思っていたと思います。
そして朱音さんに出会い、あなたは私の魔術師としての常識を軽々と越え、そして色々と欠けている私を知っている上で思いを寄せてくれた。
そういう素晴らしい家族に出会えたことは間違いありませんが、あの魔術師と違うのは、僕が皆のことが好きだからです」
朱音が驚いたような顔をする。
「皆が好きだから、結局は嫌われたくない、ということなのでしょうね。
その人の意見に耳を傾けなければと、その人を大切にしなければと思うのです。
あの魔術師も一度は家族を持ち娘までいたのなら、きっと彼女たちはあの魔術師に必死におかしいことだと訴えたかもしれません。
でも彼にはそれが、自分のことを理解しない、相手が愚かなのだと自分を正当化することしか出来なかった。
相手が大切なら、相手と意見が例え違ったとしても見下してはいけないのです。それに彼は最後まで気づくことは無かった、そういう違いなのだと僕は思っています」
そう言って冬真は穏やかに笑みを朱音に向けた。
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