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朱音には沢山の贅沢な気持ちが込められた言葉だ。
平凡な自分をこんな素晴らしい人に求められている、それが嬉しくないわけが無い。
「私は、冬真さんに出会えて幸せです」
真っ直ぐに冬真の宝石のような瞳をしっかりと見て朱音は言葉と気持ちを伝える。
冬真の表情が何か耐えるようなものになり、そしてとても嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「朱音さんの体調が落ち着いたら、お父様に直接挨拶に伺わせて下さい。
結婚を前提にお付き合いをさせて頂いてます、と」
え、と朱音が声を出した。
しかし冬真は美しい笑みを朱音に向ける。
「健人に結婚をするつもりが無いと話したそうですね?
でも交際する相手がいるのなら、当然結婚も考えてくれているのでしょう?
おや、それとも僕との交際は遊びだと?」
矢継ぎ早に笑顔で質問攻めをされ、朱音はあわあわとどう答えれば良いのか混乱する。
健人に結婚をしない話しはしたが、冬真の話しは本人に伝わっているのか朱音は青ざめるべきなのか心臓を痛めるべきなのか訳がわからない。
「あっ、あの、健人さんは何か他には」
「そうですね、ロンドンで出会った男性はただの思い出と言っていたと」
「本当にそれだけですか?」
朱音がおどおどしながら尋ねると、
「他に何か僕に聞かれたくない話しがあったのなら、是非、聞かせて頂きたいですね」
「無いです!!!」
妙に笑顔の怖い冬真に、朱音は全力で否定した。
冬真のことをずっと好きだったことを話していないかは、もう健人に直接聞くしか無い。
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