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「それで」
焦ったように考え込んでいる朱音に、冬真は笑い出しそうになりながら声をかける。
「朱音さんに再度確認を。
ロンドンの彼と僕、両方から結婚を申し込まれたらどちらを選びますか?」
朱音は間の抜けた顔で冬真の方を見た。
え、なんでまた?!という気持ちと、何故ここでその質問が来るのかわからない。
「ですからロンドンの方に会うことはもう無いですし」
「答えて下さい」
笑顔だが有無も言わせないその声に、朱音はう、と思わず身体が後ろに下がった。
ベッドの上にいるがここから逃げたい。
でも何度も聞いてくるのは、未だに自分の気持ちが信用してもらえていない気がして朱音としても不本意だ。
朱音は真っ直ぐに冬真を見る。
「冬真さんです。私の一番は冬真さんだけです」
あぁ。
どうしてもその言葉を彼女の口から聞きたかった。
彼女の中にいるあの時の美しい思い出の自分では無く、多くの物が欠けている不完全な自分を選んだのだと言うことを。
「・・・・・・ありがとうございます。
朱音さんの中の彼に、僕は勝てないのかと思っていまして」
苦笑いで話す冬真に、朱音は軽く吹き出した。
「冬真さんもそんな弱気なことを思うんですね、以外です」
「僕はあなたに関しては色々と調子が乱れるんですよ」
朱音はその言葉に嬉しいと思うより複雑な心境になった。
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