第五章 愛しい人へのアメシスト

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「その言葉も聞けたことですし、ちょっと待っていて下さい」 そう言って椅子から立ち上がった冬真は笑顔を向け部屋を出て行った。 きっと飲み物でも持ってくるのかと朱音は上半身だけ起こしていたベッドから足を下ろし、座るような形で来るのを待つことにした。 再度ノックが聞こえ、冬真が入ってくる。 だが冬真の持っている物は飲み物では無く小さな木の箱らしき物だった。 冬真は椅子を動かし、ベッドに座る朱音に向き合うようにして座ると、冬真の片手に収まるくらいの木の箱を差し出す。 箱は長方形、後ろが凝った作りの蝶番で留められ、何か彫刻の施されたその箱は飴色でとても古い物のようだ。 朱音が戸惑っていると、 「これを朱音さんに。どうぞ中を見て下さい」 朱音はおずおずと箱を受け取り、ゆっくりとその箱を開ける。 そこには朱音の持っていたラブラドライトのネックレスそっくりの品が一つ、美しいレースの上に置かれていた。 朱音は驚き冬真を見る。 「Lady, you forgot something.」 ネイティブな英語が冬真から発せられ、朱音はただ冬真を見つめる。 何か、何かその言葉や声に覚えがある気がするのだ。 困惑している朱音に、冬真はまだ思い出せていないのか、その時の言葉を覚えていないのか判断がつかない事が少し寂しく感じながらも言葉を続ける。
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