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「昔、ジェムの鑑定を馴染みの依頼者から頼まれ、ロンドンのアンティークショップに出向きました。
そこへ不安そうに黒髪の少女が入ってくると中を見ているようでしたが、テーブルに置いてあった一つの物を食い入るように見ていて。
何の石だろう?と触ることも無く不思議がっているので教えてあげたのです、それはラブラドライトですよ、と」
朱音の目がみるみる見開かれていく。
「依頼者に呼ばれて店の奥に入ったのですがあの少女が気になって再度覗くと、値札を見てがっかりとしたのか肩を落としながら店を出て行きました。
ふと、その少女に渡したくなったのです、あのラブラドライトのネックレスを。
そして車で追いかけて何とか見つけることができ、彼女がかなり驚いていたので忘れ物だと伝えたら、彼女は英語を何とか聞き取ったのか必死に頭を下げていました。
まさか何年もしてその少女に再会するだなんて夢にも想いませんでしたが」
冬真は穏やかに笑う。
だが朱音の目はうっすら涙が浮かび、唇が震えている。
「で、でも、あの人の髪は確か金髪で」
「あの当時はまだ僕も若くて、何となく気分転換に髪の色を染めていたんです。
そういう人は意外に多いんですよ?
あのヒラリー・クリントンも地毛はかなり濃い茶色です。でもイメージ戦略で金髪、人気のブロンドに染めていますし。
日本だって気軽に染めるでしょう?そのレベルの話しなんですが、がっかりさせましたね」
そ、染めてた?!
目の前にいるさらさらなダークブラウンの髪の毛を持つ人が、わざわざ金髪に染めていた、朱音は怒濤の話しに思考がストップしそうになっていた。
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