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「お恥ずかしい話し、朱音さんに会っても最初はあの時の少女だとは気づきませんでした。
あのラブラドライトのネックレスを見てやっと思い出したんです。
てっきり中学生が高校生くらいと思っていたので、短大生だったと聞いた時は驚きましたが。
その少女が、お守りのようあのネックレスを持って、僕と出逢った事も美しい思い出になっているのだと知ったとき、今の僕を知らせるのは可哀想だとあの日限りの再会になるはずでした。
なのにラブラドライトのネックレスはそれを拒んだのか再度僕たちに会わせるようにした。あげく朱音さんは急遽家を探すなんて事まで起きて。
危険に巻き込まないようにすべきだったはずが、結局あなたをこの洋館に呼んでしまった」
朱音の目は既に涙が流れている。
「こういう事を『運命』、と呼ぶのでしょうね」
優しい声で、でも時折漏れる小さい笑い声で語られた言葉に、朱音は思わず俯き自分のパジャマを握りしめた。
涙が服に落ちていることに気が付き朱音は慌ててそれを手で拭おうとしたら、細い指が朱音の顎に当てられ上を向かされる。
朱音の瞳から止めどなく流れる涙に冬真がそっとハンカチを当てれば、朱音は震えながら冬真を見上げていた。
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