686人が本棚に入れています
本棚に追加
冬真は手を伸ばし、朱音の黒髪を撫で、顔を上げた朱音に、その手を髪から頬に滑らせる。
その行為に恥ずかしそうに目をそらした朱音を見て、何の後ろめたさも無く朱音に触れることが出来たことが、こんなにも自分自身を落ち着かせるとは思っていなかった。
自分の思い描いていた、目指すべき理想の魔術師とはおそらく違う。
だが宝石魔術師として、朱音や健人から心より綺麗だと思ってもらえる存在になることが、正しいことなのだと冬真には思えていた。
冬真は頬に伸ばしていた手を戻し、朱音の両手を自分の両手で包み込む。
全ての行為にドキドキしている朱音は、ただぼうっとラブラドライトのように虹色に輝く瞳を見つめる。
「朱音、結婚を前提にお付き合いをしたいと、再度申し込んでも良いでしょうか」
柔らかく、なのにノーとは言わせない、そんな冬真らしい声に朱音は咲き誇るような笑顔になる。
「はい。ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします」
そう言って頭を下げると、冬真がその頬に手をあて自分に視線を向けさせる。
「ありがとうございます。
ただ、ノーと言われても何としてでもイエスと言わせる気ではありましたが」
冬真もそう言って笑えば朱音も一瞬驚いた顔をしたが、思わず笑ってしまう。
温かく、でも熱っぽい冬真の視線に朱音は囚われ、冬真の手がする、と朱音の唇に降りてきた。
最初のコメントを投稿しよう!