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「何かお探しですか?」
「いえ、拝見しているだけですので」
男性スタッフが声をかけると冬真が笑顔でやんわりとそう言えば周囲の女性スタッフから熱いため息が聞こえ、朱音はある意味拷問だと思った。
冬真はそんな周囲など気にせずガラスケースに並べられたダイヤモンドのリングを見ながら朱音に顔を向ける。
「婚約指輪は既製品では無くて僕が所有するダイヤのルースがありますのでそれを使って、リングのデザインは朱音さんに任せようと思っています」
「こ、婚約指輪?!」
一応結婚への言葉を聞いているとは言え、そういう具体的な言葉が出ると朱音はやはり戸惑う。
「5カラット近いものもありますし、全て品質やカットも最上級です。
やはり婚約指輪なら定番のブリリアントカットが良いと思いますが、色々ありますのでまずはルースを見てからですよね」
「5カラット?!」
朱音が驚いて声の方を向けば、店員達が声を出し目を丸くしている。
そもそもそんなサイズの一粒のダイヤでハイクオリティな品は扱わない。海外のハイジュエリーのショップならオーダーで出来るがそんな事をするのはほんの僅かな人だけ。
冬真はブランドを軽視するつもりはないが、朱音には最上級のダイヤを送るつもりなのでそういう店でダイヤモンドから購入する気は一切無い。
洋館で保管しているダイヤのコレクションから朱音に選んで貰うつもりだが、本来は自分にそういう未来が来ることを考え集めていたわけでは無く、将来ダイヤの購入は厳しくなるだろうという予測で買っていた物だ。
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