隣の芝生は青くて大変

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行った先はお台場のとあるホテルのレストラン。 それも30階で驚くほどに広い個室。 どう考えても二人用では無く10人は軽く入れる広さだ。 朱音が中に入り頬を引きつらせているのを見て冬真は笑う。 「いつも横浜高層ホテルから見る海沿いの夜景も良いですが、こういうところも良いでしょう?」 「はい」 「僕が来たかったんです。迷惑でしたか?」 いえいえ!と朱音が否定したが、実際は朱音が以前雑誌を見て目を留めているのを冬真が気付きこの店にした。 そわそわと外の景色を見たがる朱音に冬真が一緒に見ましょうと誘えば、食事の合間に窓から外の夜景を楽しみあっという間に食事は終わって、少しお台場を歩きましょうという冬真に朱音は、はい、と嬉しそうに答えた。 食事を終え二人でお台場を歩く。 朱音は輝く夜景や観覧車に目を輝かせ冬真と手を繋ぎ、いつになくはしゃいでいる。 「冬真さん、私がお台場に来たがっていたの、もしかして知ってましたか?」 「そうなんですか?偶然は起きるものですね」 にこやかに返すと、朱音は冬真さんに隠し事は出来ないですねと笑う。 「何だかみなとみらいの観覧車に冬真さんと二人で乗ったのが、遠い昔のことのように思えます」 朱音がお台場の観覧車を見上げながら言えば、冬真がその肩を抱く。 「大丈夫ですよ。もう朱音さんは一人ではありません。 むしろ騒がしいくらいでしょう?我が家は」 冬真の言葉に朱音は涙が浮かびそうになる。 あの絶望しかけた見合い話があったというのに、今はあのロンドンで二度と会うことの無いと思っていた憧れの男性と未来を誓い合っている。 あまりに贅沢な事ばかりで、むしろ未だに現実感が朱音には湧いていない。 「私は幸せ者です」 「大丈夫。もっともっと幸せになりますよ」 朱音は、冬真さんずるいです、と呟いて冬真は朱音に視線を向けた。
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