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ふと、目線の先にいた相手と冬真は目が合った。
お互い軽い会釈で済まそうとしたが朱音がそれに気付く。
「もしかしてお知り合いですか?ご挨拶した方が」
「あぁいえ」
だが相手もその同伴者に言われたのか困惑したような顔を女性に向けている。
彼があんな戸惑った顔をしているのを初めて見たことで、もしかしてあの女性が噂の巫女なのだと気が付いた。
冷静沈着で年若くして東京の陰陽師を統べる長となった藤原光明が、長年のしきたりだった子供を作るための妻と、自分の能力を永らえる為の巫女という制度を廃止させ、巫女である若い女性だけを選び長年対立していた京都の陰陽師と和解したというのは日本の魔術師達にも衝撃のニュースとして知られていた。
「久しぶりですね、光明くん」
「お久しぶりです、冬真さん」
お互い歩き出し目の前に来たのは黒い髪に目鼻立ちのくっきりとした端正な若い男。
背も高く和服姿で周囲の視線を集めている。
横には若い女の子がやはり着物姿で恥ずかしそうにお辞儀をした。
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