隣の芝生は青くて大変

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その様子を冬真が笑みを浮かべて見ているが、目が笑っていないことに気付いた朱音はアレクの名を呪文のように心の中で唱えて助けを求めているが一向に現れない。 もし聞こえていたとしてもアレクとしては『夫婦喧嘩は犬も食わない』という言葉を不本意ながら言いたくなっていることだろう。 「彼は東京の陰陽師を統べる長です。以前お話ししたことがあったでしょう?」 はい、とだけ朱音は返していても、目の笑っていない冬真にハラハラしている。 うかつなことは話さない方が良いと思ってそれだけ返して上目遣いに様子をうかがう。 「・・・・・・そういえば、朱音さんは黒髪で和服の似合う格好いい男性がお好みでしたっけ」 「違います違います!」 やはりあの時の不機嫌の原因はこういう事だったんだと朱音が気付いても遅い。 必死に手を振り顔をぶんぶんと振りながら否定するが、冬真は静かに笑みを浮かべていて周囲の気温が急降下している。 「おや、違うんですか?では金髪の男性がお好みですか?」 「それは冬真さんが髪を染めていたのが悪いんじゃ無いですか!」 貴女が落としたのは金の斧ですか、黒の斧ですか、と恐怖を醸し出す女神に詰め寄られている気がして朱音は背中に冷や汗が流れる。
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