月時雨

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「やったー!」  彼女が頭を上げ、ピョンッと立ち上がる。  赤ん坊のように無邪気に笑う、彼女。  体型に合っていないTシャツから、棒のように痩せこけ、骨ばった体が見える。  僕はリビングキッチンへ歩き、冷蔵庫を開ける。  作っておいたオムライスとケチャップを取り出す。 「りぃ。ご飯を食べる時は?」 「すわる!」 「その前」 「てをあらう!」 「そうそう」 「おてて、じゃぶじゃぶー。おてて、じゃぶじゃぶー」  勝手知ったる様子で、彼女が洗面所へ消える。  チン、と。  間の抜けた音を立てるレンジ。  僕は温まった皿を取り出し、もう1皿をレンジに入れる。  ダイニングテーブルに散乱していた封筒やハガキを、ザカザカと端に寄せ集め。  彼女の定位置に、オムライスの皿を置く。
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