雨の彼方

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「私、不意な雨で濡れてしまったことは人生で一度もないんです」 その女性は話の途中、突如としてこう告げ、最初それが冗談だと思った。 しかし女性は決してこれを冗談とは認めず、真摯な顔で頷き、そして言葉の意味を次に明かした。 「実は私、少し先の未来が見えるんです」 彼女は真面目な顔でそう言い、次には表情を柔らかくほぐして微笑んだ。 それは自分の発言が冗談であることを示す一種のメッセージのようにも思えたが、それは違うのだと言うことはすぐに分かった。彼女は今度、事の真相をはっきりと口に出して伝えてきたからだ。 「私は十秒後の未来の自分が見えるので、不意に雨に濡れる事は決してなかったんです」
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