雨の彼方

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運が悪かったとしか言いようがない。 会社を出てすぐ雨に打たれるなんて。 予報では今晩は晴れ。だから傘も持たずに家を出て、退社した途端に急に降り出したのは運が悪いとしか言いようがない。それも雨脚は急に強くなって、やむなく俺は近くにあった店に飛び込んだ。 そこはちょうど会社近くにあるバーで、だがこれまでには一度も足を運んだことはなかった。 時刻は二十時手前。客は俺一人で、まだ店を開けたばかりなのだろう。 しかしこうも残業したときに限って、予報が外れ雨に打たれるとは何たる不運。 ここで雨宿りをすれば帰宅もさらに遅くなる。 はぁ、と溜息ついてここで明日の出勤のことを憂いても仕方ない。 とりあえずは気張った心を解そうと、俺はカウンター席に座り慣れないカクテルひとつを注文。すると目の前には透明ブルーの透き通ったような潤いある色合いの一杯が置かれ、飲んでみるとラムのようなコクを強く感じたものの悪くない味。
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