雨降る森の花

4/4
前へ
/4ページ
次へ
***  薬草と薬を詰めた袋を馬の背に括り付け、シオンは雨の降り続ける森を見上げた。  逆にすっかり軽くなってしまった鞄には、いつもいつも、ひとつだけ渡せなかった物が残っている。  宝石も何もついていない、小さな花の彫り物が散らばるだけの銀の簪。  それはシオンにもう少し勇気が有れば、変わっていたかもしれない未来の証だった。  もし、彼女が故郷に帰る前に、贈ることができていたなら……。  シオンはゆっくりと首を振る。  そして木に繋いであった馬の手綱を解き勢いをつけて背に乗ると、そのまま駆けだした。      雨は、ずっと降り続いている。    
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加