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はっ、
と。
咄嗟に、Kは思わず自分の口を押さえて、ロッカーの影に戻る。声は出ていないはずだが。
物音はしなかったか、気付かれなかっただろうか? 早鐘のような自分の鼓動が通用口まで聞こえてしまいそうで、不安になる。頬も、耳も熱い。
想定外のこととはいえ、デバガメをする予定はなかったのだが。Kは意識して深く呼吸する。
とかく派手な山科がまだ独身で、虚々実々、様々な噂があるのは知っている。その中には性癖についてのものも多いし、今さら相手が男であることに驚いたりはしない。
しないが。
しかし山科の、艶めいた声の余韻と。
ほとんど見えなかった相手の、その時、きっと閉じられていない瞳がすこし、笑っていただろうかと、
気に、なって、
ひどく、羨ましくなってしまった。
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