縁もゆかりもないキミへ

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秀治は細心の注意を払いながら、その手紙を例の封筒へ戻した。元通り直せるか不安だったが、封筒は最初からべったりと糊付がされていなかった様子で、思ったより容易く現状復帰をすることに成功した。封筒を握り締めた彼は、今日が土曜日ということも忘れて、郵便局へ行こうと走り出した。しかし、外へ飛びす寸前で、彼はその足を止めた。 玄関の郵便受けに、何かが入っている。 開けてみると、そこには淡いピンクの封筒が1通……まさかと思い裏面を見ると、見覚えのある筆跡で、"みう"と書いてある。あの少女から、また彼の元に手紙が届いたのである。 秀治は一瞬どうすべきか迷ったが、すぐさまリビングに戻り、そばにあったカッターを使って、封筒に貼り付いた糊を慎重に剥がしていった。ご存知の通り、他人宛の封筒を開けることは犯罪だ。彼もそのことについては重々承知だったが、好奇心の方が上回ってしまったらしい。そうこうしている内に、2通目の封筒が開いた。これも頑丈に糊付されてはいなかったらしく、綺麗に開けることができた。 手紙を開くと、今回も花と少女の絵が紙面いっぱいに描かれていた。モノクロだけど心が温かくなる。まさにあの少女の絵だと秀治は確信した。手紙の書き出しは、前と同じく『パパへ』で始まっていた。 『パパへ。パパ元気? みうは元気です。今日8さいになったよ。またお手がみかくね。みうより』 読んでいた秀治は、すぐさま違和感を覚えた。 ── 8歳……? 確か1通目には、『7さいになったよ』と書いてあったはずだった。明らかにおかしい。だが、筆跡を見るに同一人物からの手紙で間違いない。 ──たった1日で、女の子が1つ歳を取った……? そのメカニズムは、いくら考えても分からなかったが、受取人も差出人も、秀治にとっては赤の他人だ。少女が何歳だろうが、自分には関係がない。よって、秀治はこれについて深く考えることを諦めた。それより今はもっと大事なことがある。秀治は即座にスマホを取り出した。 "他人宛 郵便物" 検索ボタンを押すと、画面にはいつくかの対応策が並んでいた。秀治はそれらをひとつひとつ吟味して、自分が次取るべき行動について考えを巡らせた。
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