13 生還 連絡船

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13 生還 連絡船

「本日、夕刻五時、国際線、△△△、〇〇〇便、サンフランシスコ行きが、機器故障のため、成田空港へ戻る途中、落雷にあい・・・」  テレビの緊急報道が、墜落事故を伝えた。  まったく、このお盆のクソ忙しい時に、なんだ!  何とかの法則っちゅうのがあったな・・・。  忙しい時にかぎって、その上を行くようなことが起りおる・・・。  最近は、森羅万象の定めも、狂ってきおったか・・・。 「こちらエンマ大王。  おーい、オニ曹長!  乗客は予定に入っとらんぞ!  こっち幽世(かくりよ)の受け入れ体制はできとらんけん、三途の川を渡してはいかんぞ!」 「エンマ閣下。そうはいっても、 もう、皆、覚悟しましたぞ!」 「手違いだといっとるだろう!早く救助せんかい!」 「了解しました。  こちら、レンゴク司令室。  一角艦長!  ただちに、三途の川に生還連絡船を派遣し、〇〇〇便の乗客を救助されたし!  全員を現世(うつしよ)へもどしたまえ!」 「こちら一角艦長。  救助艇・生還連絡船。ただちに乗客を救助、送還します!」  ふたたび、テレビの緊急報道が、墜落事故を伝える。 「・・・ただいま、千葉県沖に墜落した△△△、〇〇〇便の乗客は、全員無事との速報が入りました!  △△△、〇〇〇便の乗客は全員無事です!  墜落した△△△、〇〇〇便の乗客全員が、付近で操業していた漁船団に救助されました。  千葉県沖に墜落した△△△、〇〇〇便の乗客は、全員無事です!」  助けられた〇〇〇便の乗客は、漁船団の乗組員と、その背後に見える巨大な生還連絡船にむかって合掌し、助けられたことを感謝した。  生還連絡船を見たのは、〇〇〇便の乗客だけだった・・・。                                     (了)
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