0~渡航前

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 認証終了を告げる短い音と鍵が開く音を待って、ドアを引き開ける。中へと踏み込もうとして顔をしかめた。  寒い。  流れ出て来た風は涼しいを通り越していた。半袖では鳥肌が立つほどだ。  扉の先はラウンジだった。ソファやテーブル、ディスプレイなどが置かれる中に、いくつものぬいぐるみやら絵本やら新聞やらが散っていた。……無人だったけれど。 「またか」  世話役や年長組の目がなくなるととたんにこれだ。悪戯で設定温度を変えたまま、夕食にでも行ってしまったのだろう。いい加減、コントローラの位置を変えた方が良いかもしれない。  そんなことを考えながら、エアコンの設定温度を元に戻す。ついでに転がっていたぬいぐるみに手を伸ばした。……ソファならともかく、床に転がっているのは可哀想だ。  ぬいぐるみをの元へと運び、立ち去りかけて、ローレックは足を止めた。ぐるりとラウンジを一望する。  習い性というべきか。どうも共有スペースが散らかったままなのは落ち着かない。
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