5人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
認証終了を告げる短い音と鍵が開く音を待って、ドアを引き開ける。中へと踏み込もうとして顔をしかめた。
寒い。
流れ出て来た風は涼しいを通り越していた。半袖では鳥肌が立つほどだ。
扉の先はラウンジだった。ソファやテーブル、ディスプレイなどが置かれる中に、いくつものぬいぐるみやら絵本やら新聞やらが散っていた。……無人だったけれど。
「またか」
世話役や年長組の目がなくなるととたんにこれだ。悪戯で設定温度を変えたまま、夕食にでも行ってしまったのだろう。いい加減、コントローラの位置を変えた方が良いかもしれない。
そんなことを考えながら、エアコンの設定温度を元に戻す。ついでに転がっていたぬいぐるみに手を伸ばした。……ソファならともかく、床に転がっているのは可哀想だ。
ぬいぐるみを仲間の元へと運び、立ち去りかけて、ローレックは足を止めた。ぐるりとラウンジを一望する。
習い性というべきか。どうも共有スペースが散らかったままなのは落ち着かない。
最初のコメントを投稿しよう!