第一章 リリム×ふろふき大根

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第一章 リリム×ふろふき大根

 梅雨のど真ん中で空気は湿っぽいけど、どうにか雨は降らないでくれそう。  薄曇りの空の下を、私はバ先に向かっていた。  土曜日のバイトは学校が終わってからもう一仕事って感じで、いつもならちょっとダルいんだけど、今日は平気。  だって今日は友達をバ先に招待するんだから、いつも以上に誠心誠意おもてなししないとね。  私はクラスのいつメン四人組で、駅ビル『キラリナ』の通路をくぐった。 「でもさー、週三でバイトなんてすごいよねー」  クラスメイトの一人、美奈が言った。  ちょっとぽっちゃりした、人懐っこい笑顔が癒し系だ。  勝手に私としてはぽっちゃり仲間認定しているけど……悲しいことに背は美奈のほうがうんと高い。 「ええー、そんなこと言ったら瑠璃なんか部活週五でしょ?」  私は内心ちょっと得意だったけど、でも謙遜して別のコに振った。  男子にも見劣りしない長身のフェンシング部員、瑠璃がそれに答える。 「いや、部活は好きでやっていることだから。バイトとはいえ、仕事を週三でやっている詩恵は本当にすごいと思うよ」 「えへへ、そうかな? ありがとう!」  今度こそ素直に受け取って、私はドヤる。  週三バイトも二か月続くと、そろそろ自慢してもいいよね!  それに、私のバ先はただのレストランじゃないんだから。――って、『そのこと』はさすがに友達には内緒だけどね。 「でも詩恵はバイトばっかりしてて勉強がおろそかになりすぎだって」  いつメン四人組の最後の一人、来花がケラケラと笑った。  全科目平均点行かなかった中間テストの話だ。
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