第一章 リリム×ふろふき大根

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「じゃあ逆に、ガチのヴィーガンとかベジタリアンのお客さんは何割くらいなのー?」  美奈がの質問に、私は頭の中でざっくり考えてから答えた。 「うーん、一割行かないんじゃないかな」 「あー、聖智のクリスチャン比率と同じくらいかー」  なんて、うちの高校の名前を出す美奈。  そうそう、だいたいそれくらい。  私たちが通う聖智高校はキリスト教系で、いわゆるミッションスクールだ。  とはいっても、キリスト教徒以外の生徒のほうがずっと多い。  私も家の宗教は無宗教で、でも盆踊りもクリスマスも初詣も楽しんじゃうような、なんでもアリのタイプだし。  瑠璃に至っては、お寺の分家だとか言ってた。 「つまり変わり者ってことか」 「「ちょっとどういう意味!?」」  瑠璃に言われて、来花と美奈が大声で怒った。  普通に友達してると忘れがちだけど、この二人はクリスチャンだ。  ――来花はただのクリスチャンではないんだけどね。  そんな話をしながら、丸井百貨店の脇を進み、タピオカ屋の前を通過する。  ここから井の頭公園へ至るまでの途中の道。  画廊の角を曲がると、絵心のないきゅうりの絵と『営業中』の文字が書かれた看板が目に入った。  その横にある赤い屋根の建物が、私のバ先『寡隠堂』だ。  駐車場のもみじマーク付キャベツ色ワゴン車も、もうすっかりおなじみだ。  見慣れた木の扉に、私は手をかける。 「あれ、詩恵ってバイトでしょ? 裏口回らなくていいの?」  美奈が首を傾げた。 「あー、店長が裏庭見られるの嫌なんだよね」 「裏庭を? 寝室とかならわかるけど、なんで裏庭嫌なの? 変わってるねー」 「というか、それは違法なものを栽培したりしてないのか」  ちょっと苦笑いの美奈と、ズバリとヤバげな指摘をしてくる瑠璃。 「まさか。『ものすごい園芸オンチ』だからってだけだよ」  と、私がかなり割り引いた言い方で説明すると、瑠璃と美奈はけらけらと笑った。
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