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「梅雨の季節はこうして萌佳のとこに来るのが増えるね」
フッと笑ってあたしの頭を撫でる。
晴空くんの手はいつも暖かくてあたしの大好きな手なんだ。
「いつ来ても家にいるけど、萌佳は遊びに行ったりしないの?」
「うん、友達もいないからね」
「じゃあ萌佳にとって俺はたった1人の友達だ!」
「ふふ、そうなるね」
こう喜んでいる様子をみるとぎゅうっと胸がなる。
こんな暗い話を明るく変えてくれるのは晴空くんだけだよ。だから、あたしは晴空くんのことが好きなんだ。
「大丈夫だよ、雨が降っても沈んじゃう気持ちは俺が全部もらってあげるから」
「.......晴空くん」
晴空くんはやっぱり不思議。
雨が降ると気分が沈んじゃうこととかあの事件の話とか誰にもしていないのに、晴空くんはわかってくれる。
「雨が降ったら萌佳に会えるの、俺は楽しみなんだよ」
「.......あたしも」
本当は晴れだって雨だって会いたいけれど、そんなわがまま言えない。
だって晴れてる日に彼が会いにきたことはないし、晴れるとすぐに帰ってしまう。
だからこの雨は止まないでといつも思ってしまう。
雨の日が嫌いだったのにいつの間にか雨が降ることを楽しみにしていた。
「あ、晴れたね。帰るよ」
あたしの願いもむなしく、さっきまで降っていた雨は上がって、虹までできている。
「じゃあまたね」
あたしに手を振って、振り返ることもなく晴空くんはいつものように去っていった。
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