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「いらっしゃい、萌佳ちゃん」
「今年もありがとうございます。お邪魔します」
命日は毎年同じく被害者家族の吉崎さんの家で過ごしている。
事故で旦那さんと息子さんを亡くされた吉崎さんはあたしが1人になってしまったことを心配してよく会いに来てくれていた。
なんでもあたしのお父さんが息子さんの担任だったらしく、偶然一緒になったのだとか。
「そういえば不思議と命日は絶対に雨が降らないわよね」
「そうですね、みんなが守ってくれてるのかもなんて思ってます」
「きっとそうよ.......萌佳ちゃんのお父さんとお母さんとうちの主人と息子がね.......」
「ですよね、絶対そうだって思います」
吉崎さんはいまやあたしのお母さん代わりに色々と話を聞いてくれる。
命日以外もよく電話をくれたりとありがたいんだ。
「.......ただいま」
「えー、あんた今年も帰ってこれないんじゃなかったの!?」
どうやらずっと会ったことのなかった上のお子さんが珍しく帰ってきたらしく、玄関まで走っていった吉崎さんが驚いている。
たしかあの頃は大学生だったお子さんはもう卒業してお医者さんをやっていてあまり会えないなんて寂しがっていたっけ。
「男の子なんてお母さんのこと放ったらかしなんだから!でも萌佳ちゃんが娘代わりだからいいの」なんて話していたなーと思う。
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