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「飽きてきたな。帰るか」
人呼び出しておいてその言葉が飛び出すかと思ったが、裕人としてもこの提案は有り難いと感じた。正章は付け加えるように言葉を加える。
「このまま帰るのもあれだし、ゲームしようぜ」
「なんだよゲームって」
「ブランコ靴飛ばし。ブランコ乗ってたら急にやりたくなった。負けた方がアイスを奢る。どうよ」
小学生の頃、公園でよくやっていたと思い出す。さすがに高校生にもなってやることではないと裕人は思う。しかし、深夜のテンションというやつなのだろうか、それなりに楽しいかもしれないと感じてしまった。
「いいぜ、それで」
「決まりな」
裕人は靴のかかとを踏みつぶして飛ばす体制を整えるとブランコを揺らす。ブランコを揺らしてすぐ気付いたことは、高校生にもなるとブランコの軋む音がすごいということだ。壊れるんじゃないかという恐怖心に襲われたのか、靴を飛ばすタイミングがずれて地面に叩きつけてしまう形になる。
「下手くそ」
「うっせー」
正章に馬鹿にされて悔しい思いをする。正章は「余裕だな」と言ってブランコを揺らす。正章から飛ばされた靴は裕人の靴を軽く超えていった。
二人でケンケンをしながら自分の靴を取りに行く。正章は自分の靴を取ると、裕人に駆け寄ってくる。
「じゃあ、奢り決定な」
「はいはい、わかったよ」
二人で横並びに歩きコンビニに向かう。勝負に勝ったのが嬉しいのか正章の顔は上機嫌そうだった。
「裕人、俺は優しいからさ。アイスはハーゲンダッツでいいぜ」
「ふざけんな、殺すぞ」
互いに笑い声をあげる。深夜に呼び出された挙句、アイスを奢らせられるなんて不運だなと裕人は思う。
まあ、それでも楽しかったからいいかと、裕人は思うことにした。
夜空を駆ける流れ星は、僕達に小学生に戻る魔法をかけてくれたのかもしれない。
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