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公園に着くとブランコに人影が見える。近づいて行くと顔がはっきりと見えた。正章はスマホを眺めていたが、気がついたらしく顔を上げた。
「来てやったぞ」
「遅かったな」
「ふざけんな。連絡受けてから直行でここまで来たわ。大体、家から公園までお前の方が近いじゃねぇか」
裕人は正章のからかいに応じると、正章の隣にあるブランコに座る。ブランコに乗るなんて小学生以来だなと回想する。
ブランコは小学生のときの思い出と比べるとかなり小さく感じた。十中八九、自分の図体がでかくなっただけのことなのだが。
「もう既に流れ星が見えるよ。こっから一時間がピークだからさ」
「そうか、って一時間も見んのか」
「見ようと思えば夜が明けるまで見てられるぜ」
「勘弁してくれ」
「冗談だよ。さすがに俺もそこまで見てられん」
正章を見ると上空を見ながら笑っていた。さっきまで暗闇の中でよく見えなかったが、正章はコンビニのレジ袋を手に持っていた。
正章はおもむろにレジ袋の中身を取り出す。そして、中身を渡してきた。
「ほら、ジュース」
「サンキュー」
アルミ缶の炭酸飲料を正章から受け取る。意外だが、気遣いは結構出来るのが正章なんだよなと裕人は思っていた。
暫く二人で夜空を眺めていると、一瞬線のような光が出現する。
「あっ、もしかして今のか」
裕人は今のが流れ星か判断がつかず正章に質問する。正章は悩むような素振りを一瞬だけ見せて口を開く。
「たぶんな。俺も初めて見たからよくわからん。でも、本当に一瞬で消えるんだな、流れ星って」
正章の意見に同意する。これでは三回願い事をするのは明らかに無理だと裕人は感じた。
その後は二分毎くらいに、流れ星が現れては消えていった。
裕人は夜空を眺めながら、こんなに星を見たのはいつぶりだろうと考えていた。記憶を辿るが一致するような記憶がないので、もしかするとこれが人生で初めてかもしれない。
三十分程夜空を眺めていると少し眠気を感じてきた。裕人としては、特別星が好きなわけでもないため、同じような光景を眺め続けるのに飽きてきてしまったのだ。
そして、それは正章も同じだったらしい。
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