突然の雨はこまる

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「わ、雨だ!」 「急に雨漏りしてきたねー」  みんなで食卓を囲んでいると、ぴちゃんと雨水が床に落ちた。 「やまないねぇ」 「最近はなかったのにな」 「床下浸水も天井しめるのもイヤだねぇ……」  各々の感想。 「なんかドドドって音しない?」  最初はのほほんと話していたみんなだけど、だんだんと不安になってくる。  天井のしみは広がり、なんと激流が天井を突き破った。 「洪水だー!! 逃げろーッ!!」 「あなたっ! まだ寝室に赤ちゃんたちが!」 わらわらと避難経路に行列をつくる。 「「なんでこんなめにー! 自分たちがなにしたってんだ!」」  逃げ惑う一同。  洪水は避難先の非常口までのみこみそうな勢いで押し寄せてくる。  もうダメだ……。みんなが諦めかけたその瞬間、 『待たせたなッ! こっちに乗れ! 俺が出口まで連れ出してやるッ!!』 「もぐら先輩!」  混沌の食卓の壁をぶち破って出てきたもぐら先輩のおかげで我々ありんこ一家は全員救出された。  しかし、マイホームは突然の雨で消失してしまった。 「お前らは建築と引っ越しのプロだろ。しっかりやんな」 「またあなたに助けられましたよ。すみませんねぇ」  再び地中に潜りだす先輩にお辞儀して、大黒柱は元・自宅を地上から確認した。 「ありさん出てこなかったねー」 「まーちゃんがイジワルするから引っ越しちゃったんだよ」  水を注ぐ家庭園芸用具を持った少女と呆れた顔をする少年が畑の端っこでしゃがみこんでいた。 「やれやれ。注ぐなら野菜にしてくれ……」  外はカンカン照り。畑の野菜たちは喉がカラカラだろう。  さて、次の住まいは急な雨がないところにしなくては!
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