20人が本棚に入れています
本棚に追加
俺には視える。だから、もう人生終わったな、って今教室の片隅で絶望してるわけで。
「ねえ山岸、今日みんなでカラオケ行こうよ」
「んあ。ああ、わかった」
いつもみたいにグループLINEで済ませればいいのに、わざわざ席までやってきて、そんなこと伝えてくる女子とかいたら『もしかしてこいつ、俺のこと好きなんじゃね?』とか普通ならちょっと思っちゃうじゃん。少なくとも俺はそう思っちゃってたよ。
そう、ほんの1週間前までならね。
「じゃあ授業終わったら下駄箱集合ね」
「了解OK」
「ふふっ、なにそれ」
首を傾げて見せる笑顔は相変わらず俺のツボをついてきて。やっぱり可愛いじゃんか、間宮のやつ、くそう。
もし仮に1週間前の俺が今のやりとりなんかしちゃってたら、確実に浮かれてた。『確実』にね。でも今は、ちっともそんな事を思うことなんかできない。
え、なんでかって?
それはさ……
俺は手に顎を乗せて、ぼんやりと席に戻っていく彼女の後ろ姿を眺めた。そうそう、ひらひら揺れるスカートの横あたり。
ていうか、手。というか小指。
ため息混じりの視線の先には彼女の小指。その指元には赤い糸が結ばれていて地面に垂れていた。
俺は突然視えるようになってしまったんだ。みんなの『運命の赤い糸』ってやつを。おい、神様。ひとつだけアンタに言わせてくれ。
マジで俺の2年間分の淡い恋心を返してくれよ。
嗚呼、俺の人生、最悪だ。
最初のコメントを投稿しよう!