グッバイ青春、よろしくピンキー

2/12
前へ
/12ページ
次へ
 俺には視える。だから、もう人生終わったな、って今教室の片隅で絶望してるわけで。 「ねえ山岸、今日みんなでカラオケ行こうよ」 「んあ。ああ、わかった」  いつもみたいにグループLINEで済ませればいいのに、わざわざ席までやってきて、そんなこと伝えてくる女子とかいたら『もしかしてこいつ、俺のこと好きなんじゃね?』とか普通ならちょっと思っちゃうじゃん。少なくとも俺はそう思っちゃってたよ。 そう、ほんの1週間前までならね。 「じゃあ授業終わったら下駄箱集合ね」 「了解OK」 「ふふっ、なにそれ」  首を傾げて見せる笑顔は相変わらず俺のツボをついてきて。やっぱり可愛いじゃんか、間宮のやつ、くそう。    もし仮に1週間前の俺が今のやりとりなんかしちゃってたら、確実に浮かれてた。『確実』にね。でも今は、ちっともそんな事を思うことなんかできない。 え、なんでかって? それはさ……  俺は手に顎を乗せて、ぼんやりと席に戻っていく彼女の後ろ姿を眺めた。そうそう、ひらひら揺れるスカートの横あたり。 ていうか、手。というか小指。  ため息混じりの視線の先には彼女の小指。その指元には赤い糸が結ばれていて地面に垂れていた。  俺は突然視えるようになってしまったんだ。みんなの『運命の赤い糸』ってやつを。おい、神様。ひとつだけアンタに言わせてくれ。  マジで俺の2年間分の淡い恋心を返してくれよ。  嗚呼、俺の人生、最悪だ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加