王女と魔術師のワンダリングライフ

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 巨兵殺しの白銀。そう呼ばれる白の鎧をまとった剣士がいる。大剣一つで巨大な魔物を討つ姿からそう呼ばれるらしい。 「だから言ったじゃない。あんな剣士ほっておけばよかったんだよ。」  くるくるとヨナの周りを球体が回る。 「そしたら、トロルの肝もとれたし、こんなに疲弊しなかったよ。ヨナは治癒魔法へたくそなのに。」 「それはもう済んだことだ。」  ヨナが声を張り上げると、通行人が立ち止まってこっちを見た。  一人うずくまっている魔術師が突然声を上げたので怪しがっている。  ヨナの周りで喋っている球体、マールは他の者には見えない。分かっているので答えなかったけれど、苛立って声を出してしまった。  声を出すとくらりと眩暈がした。さっきより深く杖にすがりついたヨナを見て、球体は言う。 「ねぇヨナ。一人ならさ、いいでしょう? 」  球体に口が見えた。 「こんなにたくさん弱った人がいるんだもん。身体は残すから、いいでしょ? 」  ヨナは首を横に振った。
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