王女と魔術師のワンダリングライフ

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 平凡な生活がしたいと思った。朝起きて、働いて、眠る。休みの日は本を読んだり、少し散歩してみたりする。できれば温かい場所がいい。天気も晴れた日が多いと良い。  少なくとも今よりマシなら良い。 「じゃあまずたくさん殺してお金を貯めないとね。」  座り込んだヨナの耳に、幼い声が囁いた。 「この戦場はだめだったけど、次の戦場で報奨金をたくさんもらわないと。宿に泊まれなくなっちゃう。」  ヨナの上を白くてふわふわとした球体が浮遊しながらゆっくり回った。  顔を上げると、目の前を大きな馬車が通った。車輪しか見えなかったが、匂いで死体を運んでいるのだと分かった。  杖に力を込めて立ち上がり、歩き出すと白い球体もついてくる。  重い足を引きずって歩行者に追い越されながらヨナは歩いた。  今回の戦場ではほとんど成果を上げられなかった、気が付けば救護区域にいて、今朝目覚めたけれどまだ疲弊している。  旅人、行商人、傭兵、多くの人が通り過ぎる。ヨナと同じように足取りが重い者もいれば、軽やかに話しながら向かう者もいる。 「今回の戦場は楽だったな。トロルを全部あの剣士が倒してくれた。」  軽やかな足取りの傭兵たちが話していた。
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