ぱらぱら、ぱら。

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「でもさ、雨の音ってなんかいいよね」 「あー確かに。それはわかる」 「ね。落ち着くっていうかさ」 「ずっと聞いてられるよな」 「でもこの教室だとあんま聞こえないんだよね」 「いいガラス使ってんじゃね」 「いや普通に周りがうるさいから」  雨の日はいつもは膨大なエネルギーをグラウンドで放出してる男子たちが廊下で騒ぎだす。大きな笑い声や奇怪な叫び声が度々聞こえてきた。 「外に集中したら聞こえるかもよ」 「うーん、集中……っ!」 「…………」 「…………」 「……聞こえた?」 「聞こえ」 「…………」 「た」 「溜めるねえ」 「微かにだったからさ。ぱらぱら、ぱら、と」 「やけにおしとやかな雨だな」  もう少し聞こうと耳を澄ませたが、再び教室の外から聞こえてきた男子の断末魔にかき消された。
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