記念日

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記念日

「父の日」が「母の日」よりも、存在感が希薄なのは仕方ない(六月は一年を通して唯一祝日の無い月なのだし、せめて「こどもの日」みたいに休みにしてくれればいいのに)。 そもそも父親というのは、面と向かって感謝されたりプレゼントを贈られたりするのに慣れていないので、案外、実際にやられると逆に戸惑ってしまうような気もする。 なので、一般的にはやんわりとスルーされる事が多そうなんだけど、うちでは若干様子が違っていて、ほどほど近い感じにちょうど父の誕生日があるので、家族全員でお祝いにちょっと豪華な食事をすることになんとなくなっている。 ただ、毎年、両親と僕と妹とでそれなりに楽しい時間を過ごせたと思っているけど、今年は妹が大学進学を機に上京したため、いつもより大分寂しい食卓になりそうな気がしていた。 それでもテーブルには妹がお取り寄せで送ってくれたもつ鍋を始め、自家製の漬物やら里芋煮やらアスパラの胡麻和えやら母が腕によりをかけて作った父の好物が並び賑やかさを演出していた。 そもそもこの食事会も妹の提案ではじまったもので、家を離れてしまった今年も気を遣ってくれたのだろう、実家であるうちへ父が喜びそうな鍋セットを送ってくれたのだった。 父は日本酒、僕はビールで一杯やりながらこれらのご馳走に舌鼓を打つ。 母も一緒にテーブルについて話に加わっていたけど、先に休むと言って料理の片づいた皿を持って台所へ引っ込んで今は洗い物をしている。 なので今はリビングに父と僕の二人。あまり、しゃべらずにTVの特番の報道バラエティを見ながらちびちびと呑んでいる最中だ。 父との二人だけの時間はなんだか気まずい。
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