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その後、康介は約束通り
僕を乱暴に扱うことはなかった。
放課後遊びに出かける時でも
投げ捨てずにそっと下ろしてくれたし、
友達同士でランドセルを投げ合って
遊んでいた時も止めに入ってくれた。
たまに父の真似をして、
ブラッシングなんかもしてくれた。
そんな康介も今年で最終学年。
僕のお役目はもうすぐ終わる。
中学生になったら、
ランドセルは使われないからだ。
康介の成長を背中から見守ってきて、
すっかり親心のようなものが芽生えていた。
ランドセルを閉め忘れて
かがんだ瞬間に中身が雪崩れた日、
突然のにわか雨に濡れながら
走って家まで帰った日、
工作した方眼紙の剣を振り回して
見えない敵と戦いながら登校した日。
どれも愛くるしくて、微笑ましくて、
まだまだ近くで見ていたい。
加えて、明日からは夏休み。
僕らの存在は学校を連想させる
象徴のようなものであり、
夏休みという逃避の期間には
目に触れない場所へと葬られる。
ただ、この夏は違った。
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