第3話

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 それにしてもすごい演奏だ。  即興演奏ゆえの自由度もそうだけど、ちゃんと曲にメリハリをつけて、木々が風で揺らぐ感じが見えたと思ったら、朝露の付いた緑の葉から水滴が落ちて、澄んだ水溜まりに水の王冠を作るような感じの音楽が聴こえる。 そして、昼下がりの心地よい風を表現して、音で自然の美しさを表現していた。 曲のカデンツァ(曲の終止前の即興演奏のこと)は、盛り上りの後の祭りの灯りを思わせつつも、技巧を凝らしながらも落ち着いたものだった。 これは・・ ・・素晴らしい!! 素晴らしすぎる!!! ステージから見えるヒメノ先生がぽーっとした顔で、恋する乙女の表情で曲に陶酔している。 うん。 私がヒメノ先生なら、私だってムツキ先生に惚れてしまうと思う。 あ、私にはコウジさんという心に決めた人がいるから、そこは揺るがないけどね。 そして、曲が終わる頃には、すごい拍手の量だった。 ムツキ先生もそうだけど、ムツキ先生に付いてちゃんと伴奏をこなす田崎さんのギターも凄い!! 本当に本当にすごい演奏だった!! 私、ますますムツキ先生を音楽家として尊敬したかも。
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