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そんな話を、クレハおばあちゃんがしてくれている時に、
ピンポ~ンと、ドアベルが鳴った。
「は~い。」
と言って、玄関を無造作に開けた。
「・・あんた、昨日に続いて、どういうつもり?」
私の知っている、いつも優しいリンコのクレハおばあちゃんの声ではなく、とても不快感を伴ったような声だった。
何やら、大人の男の人の声が玄関から聞こえる。
さらに、
「もうここは、あんたの家じゃない!
親としてのあんたの気持ちは解らなくはない。
でも、リンコを捨てたのは、他ならないあんた自身なんだよ!!
今の家族と仲良くやっていたらいいから、もうリンコには構わないでいてあげて!」
クレハおばあちゃんがそう言ったすぐ後で、居間から顔を覗かせたリンコがすごく硬い表情で、
「・・お父さん・・」
とそう言った。
何を今さらなんだろう・・
親子だから、家族だからと仲良く一緒に暮らせと人は言うのかも知れないけど、実際には離れて暮らして、お互いに干渉しない優しさの形もあっていいと思う。
特に、リンコにとっては。
リンコの父は、リンコよりも、リンコに暴力を振るっていた新しい家族を選んだのだから・・。
実際の現実と向き合うことは必要だけど、それと同じくらい、家族の夢を持ってもいいと思う。
『本当は愛されていた』
と言う、夢を持たせて欲しいと思う。
でも、現実を知れば知るほど、それはただの幻想へと変わるかもしれない。
だから、リンコには関わらないことで、夢を持たせて欲しい。
そう思うのは、親友への愛だ。
間違ってるかもしれないけど、私はリンコに辛い思いをして欲しくはない。
リンコには、この現実にしがみつくことは、あまりにも辛い・・。
・・少なくとも、私にはそう思える。
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