第4話

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 そんな話を、クレハおばあちゃんがしてくれている時に、 ピンポ~ンと、ドアベルが鳴った。 「は~い。」 と言って、玄関を無造作に開けた。 「・・あんた、昨日に続いて、どういうつもり?」 私の知っている、いつも優しいリンコのクレハおばあちゃんの声ではなく、とても不快感を伴ったような声だった。 何やら、大人の男の人の声が玄関から聞こえる。 さらに、 「もうここは、あんたの家じゃない! 親としてのあんたの気持ちは解らなくはない。 でも、リンコを捨てたのは、他ならないあんた自身なんだよ!! 今の家族と仲良くやっていたらいいから、もうリンコには構わないでいてあげて!」 クレハおばあちゃんがそう言ったすぐ後で、居間から顔を覗かせたリンコがすごく硬い表情で、 「・・お父さん・・」 とそう言った。 何を今さらなんだろう・・ 親子だから、家族だからと仲良く一緒に暮らせと人は言うのかも知れないけど、実際には離れて暮らして、お互いに干渉しない優しさの形もあっていいと思う。 特に、リンコにとっては。 リンコの父は、リンコよりも、リンコに暴力を振るっていた新しい家族を選んだのだから・・。  実際の現実と向き合うことは必要だけど、それと同じくらい、家族の夢を持ってもいいと思う。 『本当は愛されていた』 と言う、夢を持たせて欲しいと思う。 でも、現実を知れば知るほど、それはただの幻想へと変わるかもしれない。 だから、リンコには関わらないことで、夢を持たせて欲しい。 そう思うのは、親友への愛だ。 間違ってるかもしれないけど、私はリンコに辛い思いをして欲しくはない。 リンコには、この現実にしがみつくことは、あまりにも辛い・・。 ・・少なくとも、私にはそう思える。
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