第4話

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「もう僕には、リンコの事を案じることも許されないのかもしれない。 でも、凛子と君たちの演奏を聴いていると、 どうしても、どうしてももう一度会いたくなったんだ。」 ・・なぜだろう なんで私はこんなに悔しいんだろう・・ 心の中にわき上がってきた怒りを、ありのままにこの人にぶつけたくなってくる。 ・・でも、それでも、それでも・・ リンコがいつか後悔するような種を、私がこの人相手に撒くわけにはいけない。 それは絶対にダメなんだ。 それに、リンコの中の、お父さんの姿がずっと優しいお父さんであるために・・ 「私、リンコが親友で良かったと思ってます。 リンコの奏でる音は、誰のよりも優しい。 でも、そのリンコの音が今日は濁っていたんです。 すごく苦しくて辛そうでした・・。 私には、あなたの大人の事情なんて判らないし、何を言われても、どんな言葉を使われても、きっと私には届かない。 ただ、親子でも別々の道でもいい。 帰ってこれなくてもいいと私は思います。 ただ、リンコをそっと見守って、そっとしておいてあげてほしいと思います。 だから、一生懸命に生きているリンコの音を、リンコの心が乱れないくらいの遠くからそっと聴いてあげてください。」 そう言った後で、同情してもらえると思っていたのか、リンコのお父さんはとても心外そうな顔をしていた。
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