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本棚に追加05.お試し期間がお試しになっていない①
ラブホテルで激しいセックスをした翌日、思い出の一夜にはしないと言い張る斎藤課長こと隼人の提案で、一か月間の「お試し期間」を設けることになった。
仕事の時は常に冷静で“出来る男”の姿を崩さない斎藤課長。
勤務時間外では麻衣子を気遣い、紳士で時には可愛い姿を見せる隼人。
お試しお付き合いなのに、こんなに大事にされていいのかと裏があるのではないかと、不安になる。
さらに麻衣子を不安にさせたのは、週末以外はお泊りをしない、という約束だった。
お試し期間でお泊りをするのはどうかと思うが、ムダ毛のお手入れをしてもらうという理由もある。
しかし、約束は一週間ほどで破られてしまった。
お試し期間中、お互いに恋人として付き合うのは無理だと思ったら上司と部下の関係に戻ること。会社関係者には絶対に口外しないことを約束して始まった二人の関係は、麻衣子が当初抱いた不安をよそに順調に進んでいた。
「美味しいっ」
仕事帰りに寄った隼人の自宅で、彼の手作りカルボナーラを一口食べた麻衣子は瞳を輝かした。
「よかった」
向かいの席に座る隼人は嬉しそうに目を細めて笑う。
すぐに用意出来るものとして隼人が振舞ってくれたのは、カルボナーラとトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ。飲食店で出してもいいのではないかと思えるくらい美味しくて、エプロンを付けた彼の格好良さと料理中の手際の良さに麻衣子の胸はキュンッと高鳴ってしまった。
背の高い彼が一摘みの塩を振りかける光景は、拝んでしまったくらい格好良いのだ。
(仕事も出来て高級車にも乗っていて、駅近のタワーマンション住まい、その上、料理まで出来きるなんて反則でしょ)
恋人としても結婚相手としても申し分なく、隼人の存在を知ったら両親は大喜びするだろう。
しかし、エリート課長と釣り合わない自分の容姿と肩書、彼の性癖が引っ掛かってお試し期間の後はどうしたらいいのか迷っていた。
「待って」
食べ終わった麻衣子の分の食器を下げようとする隼人の手を握る。
「片付けくらいは手伝わせてください」
御馳走になった上に、片付けまで彼にやらせるのは申し訳ない。
僅かに目を開いた隼人はすぐに微笑んで小皿を手渡す。
「じゃあ、一緒にやろうか」
ワンルームマンションの自宅に備え付けられた狭いキッチンと比較したら、悲しくなるくらい広いシステムキッチンに二人並んで立って食器を洗う。麻衣子が食器を洗い、隼人が食器乾燥機へ並べる。
すぐに終わる単純作業なのに、麻衣子は緊張していた。
(何かこれって……)
「これって新婚夫婦みたいだな」
「な、何言っているんですかっ」
心の声が聞こえてしまったのかと、驚いて横を向いて後悔した。
たった二時間前に、ミスをした社員を厳しい顔で指導していた斎藤課長が蕩けるような幸せそうな顔で笑っていたから。
ジャグジー機能付き広い浴槽が設置された浴室で、バスチェアーに座った麻衣子の前にズボンの裾を捲った隼人が膝をつく。
キャミソールにショーツだけを身に着けた麻衣子の膝から足首にかけて、隼人は手の平に取ったシェービング用クリームを塗り広げていく。
肌を滑る指がくすぐったくて、麻衣子はピクリと身じろぐ。
「動かないで」
左手で太股を押さえた隼人は、右手を器用に動かしムダ毛の流れに沿って女性用シェーバーを滑らせていく。
会社ではパソコンのキーボードを打ち、書類を捲る斎藤課長の長くて綺麗な指が自分の足の手入れをしている光景は、厭らしく見えて麻衣子は体の奥が疼いていくのを感じていた。

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