8話 君しかいらない

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8話 君しかいらない

「好き…愁一が好きだ」  そう告げた後、秋良は真っ赤になって顔を覆った。 (言ってしまった。キスも…うわ、何だこれめちゃくちゃ恥ずかしい)  シン…という効果音が響きそうなほどの静けさ。 (え、俺今告白したよな?何で無反応?)  そう思って指の隙間から愁一をのぞくと、愁一は時が止まったかのように固まっている。 「なっ、なんだよ、なんか言えよ…」  あまりの無反応ぶりに耐えきれなくなっていると、ようやく愁一が口を開いた。 「嘘だ」  その言葉にカッとなり、秋良は勢いよく上半身を起こして自分の頭を愁一の頭にぶつけた。  ガツンと鈍い音が響く。 「っ……!!!」 「バカ!嘘なんかつくか!」  愁一は信じられないといった顔で秋良を見る。  秋良はもどかしい気持ちで続けた。 「れ、恋愛感情かっていうとわかんないけど。お前が一緒じゃないと眠れないし、その…一人でスル時もお前のこと思い出したし…」  秋良はそう言いながらも真っ赤になって口ごもる。 (くそ、ここまで言わせやがって…)  だから…と最後は半ばヤケクソになって言葉を発した。 「きっと、そういう好きなんだと思う…!」  数秒固まった後、愁一は涙をこらえるような表情になる。  そして秋良にゆっくりと手を伸ばし、恐る恐ると抱きしめた。 「…夢じゃない?」  抱きしめる愁一の体が少し震えている。  安心させたくて抱きしめ返して頷くと、愁一の腕が強まる。 「嫌だって言ってももう逃がしてやれないし、逃げたら閉じ込めると思う」 「はは。こえーよ、お前」 「本気なんだけど」  怖いくらいに真剣な目で見つめられて、ちょっとだけビビってしまう。 「俺は、秋良しかいらないんだ…」  目の前の切実に自分を求める男がなんだか可愛くて、愁一の頬をそっと撫でた。 「…うん。…俺もお前がいないとダメみたい」 「っ…!秋良…!!」  愁一が感激したようにもう一度きつく抱きしめる。  それから顔をゆっくりと近づけ、触れるようなキスをした。  ちゅっちゅっ…と音を立てて、啄むようなキスを秋良も受け入れる。 「秋良、口開けて?」  おずおずと口を開くと、愁一の舌が入りこんできた。 「んんっ…」  舌を吸われ、上あごを丁寧になぞられるような官能的なキスに、腰のあたりがむずむずした。  息遣いと水音がだんだん激しくなってくる。 「んっふっはあっ……はあっ…」  快感と息苦しさに、喘ぐように息をする。  秋良の口からこぼれた唾液を舐め取りながら、愁一は嬉しそうに微笑む。 「気持ちよかった?ちょっと勃ってるね」 「わっ…」  ズボンの上から柔くなぞられる。  秋良の性器はもう半分くらい勃起していた。  恥ずかしくて腰を引くと、愁一が自分の下半身を押し付けてくる。  ゴリ…と硬い感触に、愁一の性器が完全に勃ち上がっているのを感じる。 「大丈夫、俺もだから」 「う、うん…」  照れ臭くて視線を逸らすと、首筋から耳元にキスをされながら囁かれた。 「いい?秋良。…したい、セックス」  直接的な単語にドクン、と体が熱くなる。  恥ずかしいけど覚悟はしてきたので、目をギュッと瞑りながらこくこくと頷いた。  秋良の返事が嬉しかったのか、興奮した息遣いの愁一にどさっと押し倒される。 「ね…乳首舐めさせて」 「はっはあ?」 「夢じゃないって確かめたい。お願い」 (そんな言い方…ずるいっ…)  愁一は有無を言わせない視線で、促す。 「胸、自分でまくって見せて?」  裸なんて風呂とか着替えで何度も見せ合ってるし、と自分に言い聞かせ、おずおずと着ているシャツを乳首が出るまでまくりあげた。  秋良の動きをじっと見守る愁一のギラついた目がなんとなく怖い。 「もう期待して尖ってきてるね。かわいい」 「そーゆーことっ、いうなよ…」 「さっき自分でシたって言ってたけど。ここも弄ったの?」  人差し指ででぴんっぴんと弾かれ、びくんと体が跳ねる。 「んっちょっ…。ちょっとだけ…でも自分じゃわかんな…い…あっ…」  左を指で弾きながら、右の乳首に愁一が吸い付いた。  両方の乳首に刺激を与えられ、一気に快感が湧き上がる。 「んっあっ…!やっりょうほうっ…!」  肉厚の舌にグリグリと乳首を押しつぶされ、甘噛みされたかと思うとじゅっ…ときつく吸われた。  ビリビリッと背筋が粟立つ。  どうしよう、こんな場所が気持ちいいなんて――怖い。 「っうっあっ…んんっ!」    刺激がくるたびに声が漏れ出てしまい恥ずかしい。  散々しゃぶられ、舐めつくされたあと、ようやく唇が離れた。  乳首にはまだ痺れるような感覚があり、はあ、はあ、と息が整わないでいると、愁一は「かわいい」と興奮ぎみに呟いてキスをする。 「乳首でこんなに感じちゃって、やらしい、秋良。今度ここだけでイケるようにちゃんと開発しようね」 「ばっ…ばかっ…!」  怖いこと言うな!と思いっきりツッコミたいがうまく力が入らない。すると、愁一の手が腰に回ってくる。 「ね、またここ舐めていい?」  そう言って、秋良のお尻の窄まりを服の上から撫でた。 「だ、だめっ…それは禁止!」  秋良は慌てて愁一を制し、のそのそとベッドから身を乗り出して、自分のバッグの中から小瓶を取り出した。 「これ…家からオリーブオイル持ってきたから…これにしろよ」  秋良からオリーブオイルの瓶を受け取り、愁一は鋭い視線を向ける。 「っ…!俺とするつもりでここに来てくれたってこと?」 「だって、するっていうから…!」  こんなものを用意して、まるで自分がしたがってるみたいで恥ずかしい、けどしたくない訳でもなく…。  まだそこまで素直になれなくて秋良が真っ赤になっていると、愁一は興奮した様子で秋良の顔にキスをしながら 「うん、そうだね。次はセックスするってさっき俺が言ったんだもんね。秋良は俺のことが好きだから、セックスしていいってことだもんね?」 「っ……!!!」  愁一が嬉しそうに言葉にしてくるのが恥ずかしくて、つい、「わかったから早く」と急かしてしまった。  すると何かのスイッチが入ってしまったかのように真顔になった愁一に、あっというまに服をすべて剥ぎ取られ裸にさせられる。  さらに秋良はとんでもないポーズをとらされた。 「な、なあ…この格好…」  愁一と逆向きになりながら、愁一の顔側に尻を向けて跨るような恰好をさせられている。  AVで何度か目にした、いわゆるシックスナインの体勢。 (初心者になんつー格好させんだよ…!) 「なあっ、これじゃなきゃダメなの?恥ずかしすぎるんだけど…!」 「うん、ダメ。秋良のかわいいお尻、全部見たいから」 「ちょっ見るなよ!やっぱやだこれ!」 「ダメ、じっとしてて。ここもう辛いでしょ?一回出そうね」  そう言って愁一は、もう完全に勃起状態の秋良の性器を手で扱き始めた。 「っんん…!ふっ…」  乳首の刺激で完勃ちしていた性器はすぐに先走りがこぼれる。  それを塗り込めるように緩急をつけてくちゅくちゅと擦られた。気持ちいい…こいつ、なんで俺のいいポイントがわかるんだろう。秋良が息を乱しながら性器への快感に集中していると、もう片方の愁一の手が秋良の尻たぶを割り開いた。  くちゅ…と舐められる感覚があり、ビクンと大きく秋良の体が跳ねる。 「やっそこ!だめだって…!」 「オイルの前にちょっとだけ…んっ…」  性器を扱きながら、愁一の舌先が秋良の後孔を刺激し始めた。 「やっやだあっ」  秋良の声を無視して入口付近を丹念に舐めていた舌が、やがてぬぐ…と中に入り込んできた。 「えっうそっ中…!ほんとにだめっそこっやだってば!」  侵入した舌が内壁を刺激する。性器を扱きあげる手も止まらない。 「あっ、あっ、ひっぃ…!やっあぁ」  後ろの穴を舐められているなんて恥ずかしくてたまらないのに、前と後ろに来る刺激が気持ちよすぎて激しく抵抗できない。 「あっあっあっ…もう、いっ…!イッちゃうからぁ!」 「んっ…いいよイッて」  愁一の手と舌の動きが早まり、促されるまま秋良は達してしまった。  びくびくっと体が震え、愁一の体に力なくもたれかかった。 「お尻で俺の舌キュウキュウ締め付けてた」  尻に息がかかるような間近でうっとりと言われ、羞恥で耳まで真っ赤になる。  息切れしながらも顔だけで振り返り、涙目で愁一を睨んだ。 「舐めるなって、いったのにっ…」 「気持ちよかった?かわいい、秋良…」 「おまっ…!!」  秋良の訴えを軽く流して愁一は秋良の尻にオリーブオイルを垂らしてきた。 「ひゃっ」 「いっぱい舐めたから、やわらかくなってる」  オイルの滑りを利用して、愁一の指がなんなく後ろに侵入してくる。 「んんっ…」 「痛い?」  異物感はどうしてもあって、息が詰まってしまう。 「はあっ…痛くは…ない。でもちょっと苦しい」 「苦しいだけ?」  中に入った指が折り曲げられ、グリっと中のしこりを刺激した。 「ひあっそこっ…」 「ここ、前も触って気持ちよかったでしょ。前立腺…グリグリすると中うねって、すごいよ…」 「やだっ言うな…!」  オリーブオイルをさらに足され、指はもう3本入っていた。  ぐちゃぐちゃとナカをかき回され、前立腺を指が掠めるたびに快感が押し寄せて腰が砕けそうになってしまう。  秋良の性器は再び硬度を取り戻し、早くも苦しくなっていた。性器に手をやろうとするが愁一が許さない。更に激しく指を動かされ、体を支えるのがやっとの状態になってしまう。 「やっあっあっ…! もう、もうやだそこ…やめて…!」 「すごいやらしい、秋良のココ、もうこんな開いてるよ。ひくひくして、早く欲しがってるみたい」  饒舌に実況してくる愁一に耳を塞ぎたくなる。  自分のソコがどんな状態になってるのかなんて知りたくない…!と涙目になっていると、目の前にある愁一の性器も、痛いほど勃ちあがっていた。  もしかして限界が近い…?  愁一も興奮しているのかと思うとなんだか嬉しくなってしまう。 「っ…なあ。これ、俺もしたほうがいい…よな…?」  後ろを弄られる快感で息も絶え絶えになりながらも尋ねた。  愁一の服の上から性器を撫でるとビクッ愁一の体が反応した。 「っ…!」  愁一の息を詰めたような声が聞こえた。  次の瞬間には秋良の下にいた愁一が体勢を変え、気づくと秋良はシーツに突っ伏して尻だけ高くあげた四つん這いの状態になっている。  愁一は秋良の背後に回っていた。 「えっなんっ…」 「っ…人がどんだけ我慢してるかもしらないでっ…そんなことする余裕あるの?なんか悔しいな」  秋良の後孔に愁一の先端が当てがわれた。  次に何をされるかわかって、秋良の体が硬くなる。 「俺のはしなくていいから。今は早くっ…秋良の中に入りたい」  同じ男だから愁一がどれだけギリギリなのかわかってはいるが、またアレが挿ってくるのを思うと身構えてしまう。 「まっまって、まだ入れないでっ…!」 「なんで?秋良のここ、ぐずぐずでトロトロだよ?」 「こっ心の準備してからっ…て、あっあああああ!」  言い終わる前に ズン!と一気に貫かれた。まるで火花が散ったみたいに目がちかちかする。 「ひっいっ…ばかあっ、まだって言った、おれっ…」 「はあっ…秋良の中、気持ちいい――」  腹の奥まで、一気に愁一のモノを突き入れられ、ひい、はあ、と息も絶え絶えになってしまう。  でも、正直気持ちよすぎてやばい。  早くも達しそうになってしまって、やりすごすのがやっとだった。  愁一は秋良の中に入って満足なのか、恍惚とした笑みを浮かべている。 「すごい…俺の上手に受け入れられたね」 「お前っ…さいあく…なんで一気に…」  悪態をつく秋良のことなどお構いなしに、秋良の腹に手をやり、自分のモノが入っている箇所を愛しそうに撫でる。  撫でられた刺激だけでびくびくと体が反応してしまった。 「やっ…今、変なこと…すんなっ…動いちゃだめっ」 「イキそう?…はあっ…俺も実はやばい。秋良の中にいるってだけで、イっちゃいそう」  そう言うと愁一は秋良の性器の根元をぎゅうっと握った。 「やっなんでそこっ!?」 「こうしてれば出ないよね。一緒にイこ?」  確かにちょっとでも性器を擦られたらイッてしまいそうだけども!え、ていうかなんで先にイッたらだめなの?  秋良が訳もわからずにぐるぐるしていると、「限界だ」と呟いて愁一が律動を始めた。 「わっあ!まって、ゆっくりっゆっくりしてっ…!」 「ごめん…無理っ…!」  興奮しきった様子で愁一が腰を打ち付けてくる。 「やっあっあぁっ…ひっいっ…!」  だんだんと激しくなるピストンに喘ぐと共に、快楽の波が押し寄せる。  根元をぎゅっと締められているのでイキたいのにイケなくて、苦しい。 「ひっいっんんっ…あっあっ……だめえっ…!」  苦しいのに、中を擦られると気持ちよくて、声が勝手に出てしまう。 「秋良っかわいいっ…」  最初はゆっくり動いていた愁一だったが、たまらなくなったのか律動はどんどん早くなっていく。  突かれるスピードが速くなり、前立腺を抉られる刺激も更に増す。  自分の体じゃないみたいに、訳のわからない快感にあえぐ声が止まらない。  シーツにしがみつきながら、甲高い声と共に、いっちゃう、やだ、怖い、を繰り返した。 「あっあっやだっ 怖いっ怖いからっ…!」 「秋良…あきら…!!」  ズンッズン!と夢中になって激しく打ち付けながら、愁一はうわ言のように秋良の名を呼ぶ。 「もっだめっおかっおかひくなるからっ…!止まって、とまってぇえ!」  快感の波が止まらなくて、ついにはグズりだしてしまう。  前を触ってほしいのに、触ったら更におかしくなりそうで、怖い。  泣き出す秋良をさらにかわいい!と興奮した様子で、一度ギリギリまで引き抜いてから更に強く突き入れた。 「やっあぁああっ!」 「はあっはあっ…一回っ出すねっ…秋良も一緒にいこ?」  愁一は秋良の性器の根元を縛る手をようやく緩め、擦り上げてきた。  ガンガンに突き上げられたまま、性器を扱かれ弱い部分を攻められ、頭がおかしくなりそうだった。 「いくっいく、もうっおれっ…!」 「俺も、もう…っ…!」  愁一もとっくに限界は超えているかのように、上擦った声で秋良の名を呼ぶ。 「好き…秋良、俺のだ…もう…!」  激しい律動と、快楽の中、ついに果てた。 「やっああああああ…っ!」  ほぼ2人同時だったと思う。勢いよく愁一の精液が中に注ぎ込まれた。  朦朧とする意識の中で、自分のナカを濡らしていく熱いものを感じる。  獣のような2人の荒い呼吸が部屋に響いた。  呼吸はなかなか落ち着きそうにない。  お互いに欲望を出しきった後のだらしない顔になりながら、どちらからともなくキスを交わした―― とろんとした眠気に襲われながら、裸で抱き合った状態で時々キスをしたり髪を撫であったりしながらセックスの余韻に浸っていた。 尻からどろっとしたものが垂れてくるのを感じ、秋良は思わず、うえっと変な声を出した。 「なんか出てきたんだけど…つーかお前、ナカに出しやがったな」 「ごめん、でも可愛すぎる秋良が悪い」 「おまえなあっ…!」 愁一は秋良の尻を愛しそうに撫でながら微笑む。 「ちゃんと後で俺が全部きれいにするから」 「はあ?やだよ」 「ダメ、俺のせいだから俺がする。明日はちゃんとゴムするから、許して?」  ちゅっとおでこにキスをされ、甘い雰囲気に流されそうになるが、「明日も」という聞き逃せない言葉に不安がよぎる。でも疲れていたのでそれ以上つっこむのはやめた。秋良はそれよりも気になっていたことを聞いてみた。 「なあ、女子たちとこれからも仲良くしたりすんの?」 「え?」 「あの一緒に帰ってた子たち…」 「嘘、焼きもち?」  驚きつつも嬉しそうな顔で言われ、悔しくなる。 「違う…いや、違わない。お前モテるからヤだなってちょっと思っただけ。…って心狭い?俺」 「狭くない。嬉しい。大丈夫、秋良一筋に戻るから安心して」 「そ、そっか。でも男友達とかは別にヤじゃないから、友達作ってもいいんだからな?」 「なんで?俺はするけど。…犬童とか、本当は目すら合わせてほしくない」 にっこりと微笑んでいるが、愁一の目は笑っていない。 「なっ!お前、それは心狭すぎ」 「俺の秋良への愛、激重だから。知ってるでしょ?」 これ以上言ったら面倒くさい感じになりそうで、秋良は話題を逸らすことにした。 もう一つ、言っておきたかった事を伝える。 「あのバイト、辞めろよ。体おかしくするぞ」 「うん、辞めるよ。眠れなくて、何かしてないと秋良を襲いに行きそうでやってただけだから。あそこ、この辺では有名なゲイタウンで、秋良の代わりがいたら…なんてひどいことも考えてたよ。秋良の代わりなんてどこにもいないのにね」 切なげな告白に胸が痛くなり、秋良は愁一の頬を撫でた。 「バカ…」 「うん。俺、秋良バカなんだ」  俺もたいがい愁一バカだなと、秋良は思った。だって自分しかいらないと言われて、求められてこんなにも安心している。  愁一を失わなくてよかった。目の前の男が愛しい。同じ想いを返せてるかわからないけど、俺も出来る限りお前を安心させてやりたい。まだうまく言葉には出来なくて、秋良は愁一に唇を寄せた。  いつのまにかカーテンから差し込む朝日が、2人を包んでいた。
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