15:翌朝と『しろねこさん』

9/9
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/249ページ
「……あの、いっこ言ってもいいですか?」  「いいですよ」  森永さんはテーブルの上にまとめていた荷物を鞄に詰めながら返事をした。   「あの『魔法少女キラキラキララ』……あたしの転機になった『しろねこさん』が出ているタイトルなんです」  意を決して打ち明けたことなのだけど。   「……そうだったんですね」  と、結構あっさりめの相槌だけが返ってきて、美優は少しだけ落胆した。    もし、森永さんが『しろねこさん』であったならば、『魔法少女キラキラキララ』と『しろねこ』のワードで、あたしに話をしてくれるだろうと思ったからだ。  でもなんであたしは。  森永さんはもしかしたら『しろねこさん』かもしれないと思ったのだろう。  だって、この国では一年間に100本近いアニメが本放送されていて、声優は数万単位でいて。  その数万分の1の確率で森永さんが『しろねこさん』だなんて、奇跡に近い。  落胆を自分の気持ちとして落とし込んで、美優は森永さんに声をかけた。   「懐かしいタイトル見たら、そう言えばそうだなって思い出しただけです。変なこと言ってごめんなさい」  その言葉に森永さんは振り向いて、やはり少し寂しげに微笑みを返してくれた。  
/249ページ

最初のコメントを投稿しよう!