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「……あの、いっこ言ってもいいですか?」
「いいですよ」
森永さんはテーブルの上にまとめていた荷物を鞄に詰めながら返事をした。
「あの『魔法少女キラキラキララ』……あたしの転機になった『しろねこさん』が出ているタイトルなんです」
意を決して打ち明けたことなのだけど。
「……そうだったんですね」
と、結構あっさりめの相槌だけが返ってきて、美優は少しだけ落胆した。
もし、森永さんが『しろねこさん』であったならば、『魔法少女キラキラキララ』と『しろねこ』のワードで、あたしに話をしてくれるだろうと思ったからだ。
でもなんであたしは。
森永さんはもしかしたら『しろねこさん』かもしれないと思ったのだろう。
だって、この国では一年間に100本近いアニメが本放送されていて、声優は数万単位でいて。
その数万分の1の確率で森永さんが『しろねこさん』だなんて、奇跡に近い。
落胆を自分の気持ちとして落とし込んで、美優は森永さんに声をかけた。
「懐かしいタイトル見たら、そう言えばそうだなって思い出しただけです。変なこと言ってごめんなさい」
その言葉に森永さんは振り向いて、やはり少し寂しげに微笑みを返してくれた。
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