「しようよ」

1/2
前へ
/2ページ
次へ
目をうっすらとあけると、部屋の中は薄暗かった。 閉じていてもいつも光が差し込んでくる、南窓のカーテンの向こう側も、薄暗い。 かわりに部屋の中には、シャーシャーという音が絶えず流れ込んでいた。 昨日からの雨はまだ降り続いてるようだった。 寝返るようにベッドの上の体を横に向け、テレビ台に置いてあるデジタル時計を睨む。 午後1時を少し過ぎたところだった。 今朝は何時頃寝たんだっけ……。 考えるとあくびが勝手に出た。     「何時?」 背中から、彼女が聞いてきた。 「うーんと、昼の1時くらい」 「えー、もうそんな時間なんだ」 ふあぁぁぁ……と、彼女。 「せっかくの日曜日も、半分終わったね」 「寝たのが明け方やったから仕方ないよ」 「そうやね」 背中の後ろから,彼女が肩に手をかけてきた。 「ねぇ」 「なに?」 「今日、どうする?」 雨音が激しくなる。 梅雨の時期は、短時間のうちに雨が強くなったり弱くなったりと変化が激しい。 予定では、昼から彼女と電車に乗って買い物に行くことになっていた。 「うーん、どうしようかな。雨、けっこう降ってるみたいやし」 「そうね。出かけたくないかも」 「なら、やめとく?」 「そうやね。やめとこかな」 ふぁぁぁ……と、僕。 出かける必要がないことがわかると、また眠たくなってきた。 体もどこかだるい。 まぶたがゆっくりと降りてきた。     「じゃあさ……しようよ」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加