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場面三 柔らかな心の芯(三)
「………んっ………」
もどかしげに喉が鳴り、拠り所を求めてほとんど無意識に男の背に手を回していた。
身体が熱い。
年下のくせに。
九つも年下で、しかも儒者としても、闇斎から見ればまだまだ駆け出しといってもいい。
そんな男に、こんなに心を、そして身体までも許すことになるとは想像もしていなかった。
大切に導いてきた弟子に裏切られ、闇斎が沈んだ無明の闇。
仁斎は、闇斎を強引にそこから連れ出そうとはしなかった。ただ闇斎を抱きしめ、慈愛で深く包み込んで、半年の間、闇斎が力を取り戻すのを辛抱強く待っていた。
闇斎を好きだとこの男は言った。欲しいとも言った。抱きたいと思ったなら、いくらでも機会はあったはずだ。闇斎もまた、拒むつもりはなかった。それを望んでいた訳ではないけれど、ただ抱きしめられ癒されて、そんな無償の愛情を他人に望むほど図々しくはない。
だが、仁斎はそうはしなかった。何も言わず、ただ優しい愛情だけを、絶え間なく闇斎に注ぎ続けた。
唇が離れて今度は頬に触れ、ほっと息をついたところを膝で突き上げられた。不意打ちに思わず切羽詰まった声を挙げた闇斎は、無防備に喉をさらし仰のいた。
「あッ………!」
仁斎の唇が頬に触れ、首筋に、鎖骨に落ちる。軽く歯を立てられてぞくりとした。肌を撫でる大きな手のひらが、未知の快楽を呼び覚ます。強く吸われ、身体の芯が疼く。そのたびに背に回した指に力がこもり、仁斎にそのことを教えてしまう。
そんなところで、自分が感じるとは知らなかった。
「何やほんまに………えらいきれいな身体やなあ」
しみじみ言われて、かあっと頬が熱くなった。思わずばちんと背中を叩いた。
「嘘つけっ」
四十も越えた男の身体に、きれいもへったくれもあるか!
「嘘と違う。こない可愛いらしい思わんやった」
「可愛………!?」
「素直でまっさらや。うちが触れたとおりに応える」
「………っ」
返す言葉も見つけられないでいると、仁斎は小さく笑い、乳首を舐めた。快感に小さく声を上げた。
「あ………!」
「あんたはんはやっぱり、怒鳴ってるぐらいの方がええ」
「おまえ………っ、あ、この」
「これ好き?」
「や、やらしい言い方………っ、するな! あ、あ………!」
こいつ………!
執拗に敏感な箇所を舌や歯で弄り回され、快感に抗しきれず兆してきた局部に、男の指が絡んだ。
「―――!」
快感と羞恥に、一気に頭に血が昇った。
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