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二話
夢に描いていた中学校生活とは程遠い始まりだった。
多くを望んでいたつもりはないのだけど、それでもほんの少しの期待を胸に抱いていた。
なにかと浮きやすかった小学校時代とは違い、中学校に入ってしまえば仲のいい友人の一人や二人できるのではないかという浅はかな希望があったからだ。
でも現実は非情で、良くなるどころか悪化したと言ってもよかった。
「若竹さんって、ちょっと変わってるよね」
早くもクラスの女子のリーダー的ポジションに立ったその人に、笑いながら悪意の欠片もなさそうに投げ掛けられた言葉。
悪い意味じゃないよ、と慌てて付け足された言葉にどんな意味があるというのだろう。
私が出会ってほんの数週間しか経っていない相手に変わっていると明言されてしまうほどの変人だということは変わらない事実じゃないか。
「そうかな。でもよく言われる」
内心そんな失礼なことを言うなんて、と呆れながらも憤っていた。
だけどそれは表に出さないようにして、私は曖昧に微笑みながらそう言った。
気にしてない風を装うのがよくないことだとは分かっている。
こんなことをするから、私にはずけずけと何を言っても構わないと思われるのだ。
でも悲しげな顔をするのが癪で、傷ついてるなんて子どもみたいだと、私は必死で大人なふりをする。
大人になんてなれっこないのに。
「それでは、三人一組で活動してください」
確か数学の授業だったと思う。
取り立てて必ず勉強しなくてもいいようなお遊び半分の問題。
だけどやたらと小難しい問題を一人だと大変だろうから、三人のグループを作って解くようにと先生に言われたのだ。
多分クラスの仲を深めるためとか、そんな理由が主だったのではないかと後から気づいた。
でもその頃の私にとってはただ憂鬱でしかなかった。
すぐに誰かと組めるような人間ならば、変わってるなんて言われないのだろうから、当然だろう。
こんなことして何になるんだ、と齢十二歳にして私の心はささくれだっていた。
その刺々しいささくれで周りを攻撃したかったのかもしれない。
でもそれは蝶の幼虫が角で攻撃するように弱々しいものには違いないのだ。
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