二話

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 席は自由に移動していいと言われた時から、もうクラスの人は行動を開始していて、四本の足が生えたガタガタとうるさい机を右へ左へと目的地も定まらないうちから動かしている。  教室中が不協和音の嵐だ。  不愉快で仕方ないのだけど、それを表に出してしまうのも子供っぽい。  小さく溜息を吐きながら頬杖をついて窓の外を眺める。  こうしていると声が掛けられにくい気がするのだ。  もっとも後で私と同じようにグループに入れず余った人に声をかけて、なんとか三人組にはならないといけないのだけど。  薄い湯気のような雲が青空の中で泳ぐのを眺めつつ、あんなに高い場所ならこんな風にうるさくはないのだろうなんてどうでもいいことを考えていた。  出来ることならばあそこまで羽ばたいて飛んで行きたいくらいだ。  ふいに私の机が指先でトントンと軽く叩かれた。  突然現れた細く白い人差し指に驚いて、咄嗟に顔を上げた。  そこにいたのは私の右斜め前の席に座るクラスメイトの一人、当時はほとんど話したことなかった冬真だった。 「えっと、若竹さんだっけ。一人?」  どう見てもそうだろうに、一応といった風に尋ねてくる。  特に気まずそうな様子もなく淡々と質問してくるのが少し不思議だった。  普通、もっとこういきなり声をかけているんだから申し訳なさそうにしたり、もしくは人懐こそうに話しかけてくるものではないのだろうか。  なんだか少し変わっている気がした。  もちろん人のことは言えないけれど。 「そうだけど」  それがなに、とはさすがに言えない。  でも私の返答を聞いた冬真はほんの少し嬉しそうに口角が上げた。  元から少し垂れている目が猫のように細められる。 「俺とあっちの……穂高も一人だから組まない?ちょうど三人だし」  冬真が自分の二つ前の席の男子を指差して言った。  私と同じように手持ち無沙汰そうに座っていて、先に冬真に聞いていたのか退屈そうにこちらを見ていた。
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